2010年05月20日

雨中有楽 雨音 太陽光発電と雨漏り

石臼





また雨が降っている。
私のアトリエは板金葺きなので、雨粒が屋根をたたく音が聞こえてくる。

雨音を消す方法はいくらでもあるけれど、あえてそんなに気にすることでもないようだ。
ということを、中伊豆のミスターギルの家を建てさせていただいたときから、ギルさんから話を聞いて思っている。
ギルさんの育ったオーストラリアでは、雨音を聞きたくて、わざわざ屋根葺き材を板金に変える人までいるそうだ。
雨音を聞くのがみんな大好きですよと、ギルさんは言っていた。ギルさんも大好きだって。

そうだよね。雨音を独りで静かに聞いているというのはいいものです。
恵みの雨。万物の源。草や木や石を、土を潤し、人の心までも潤してくれる雨。
雨中有楽の世界です。


ところで。
太陽光発電を新築の家につけようかという人たちがとっても増えていて、今私のところに相談に見えている皆さんの多くが、出来たら太陽光発電を、と言われる。

ということで、雨仕舞いのこととか、瓦屋根との美しいとりあいだとかを改めて検討し始めたら、とんでもないことにぶつかった。

太陽光発電を販売している多くの、いや大半の、いやおそらく一社を除いてすべての会社で、板金屋根の屋根材を貫通して野地板の合板に直接、取り付け金物を設置できなければ10年保証が出来ないと言っているのです。

新築の家を建てるときに、だれが新品の屋根材のてっぺんから穴をあけてビスでとめることを喜ぶだろう。

いくらシーリングして大丈夫です、10年保証です、と言われても、設計者として絶対納得いかないよ。
こちとら、50年たっても雨なんか漏らしたくはないんだよ。
屋根だぜ。穴なんか開けんじゃないよ。信じられないよ。耳を疑うよ。

建築を甘く見てるよね。シーリングで10年くらい雨漏りを防げれば、それで責任は果たせるような家ばかり大手が建てているから、こういう発想になるんだろうね。

建築を甘く見るなよ。10年間シーリングで雨漏りを防ぐって、冗談じゃないよ。
シーリングなんかに頼らなくたって、50年以上は当たり前に、屋根葺き材だけで雨が漏らない立派な家が出来ます。

昔から建っている家はみんなそうだよ。だから屋根の設計は大切で、屋根の施工は、細部にわたって神経配らなくてはいけないんだよ。そんなの基本だよ。

今年の1月6日に朝日新聞で
「太陽光発電、雨漏り注意、設置工事で穴、苦情相次ぐ」
という記事が報道されて、記憶に残っている人達も多いでしょう。

こりゃ無理もないわ。
屋根材から穴開けて、脳天ビス止めですから、こりゃ雨漏るわ。
それが標準施工だっていううんだから、そうでなければ保証できないって言うんだから、こりゃあ驚きです。

メーカーは屋根を甘く見ちゃだめだよ。こんな施工やっていたら今に日本中の家の屋根から雨が漏るよ。
いいかい、それがどういうことかよく考えなくてはいけないよ。
太陽光パネルを屋根に乗せたいけれど、必ず雨が漏るそうだよ、なんてことになったら、これは太陽光発電の普及の大きな足かせになるよ。
屋根を甘く見ちゃあだめだよ。
本当に地球のために屋根を真剣に考えないと、大メーカーと言えども大きなしっぺ返しを食うよ。

屋根材メーカーのセキノ興産と言う会社があります。
屋根のことにすべてをかけている専門の会社です。
セキノ興産では、太陽光発電パネルの設置のための、屋根材に穴を開けない様々な方法やパーツを開発しています。
これはいいです。
さすが屋根に人生をかけている会社です。
太陽光パネルを設置しても絶対に雨漏りさせないという意思が、強烈に伝わってきます。

太陽光パネルを販売している大メーカーさんたち、屋根のことは本当に謙虚になって、セキノ興産のところに聞きに行った方がいい。
提携結んで、パーツを標準仕様の中に組み込んだ方がいい。
会社のためになるし、もちろんお施主のためになるし、しいては地球環境のためにもなることです。


私のアトリエにも太陽光発電パネルが乗っております。11年目です。
Kセラ製です。
カラー鉄板瓦棒葺きの、瓦棒の上に取り付け金物を取り付けて載せてありますから、屋根に穴をあけていません。
屋根に穴をあけるという施工だったら、私は太陽光発電そのものをやることを躊躇したでしょう。

もし屋根葺き材に直接ビス止めだったら、そろそろ雨漏りが心配になってくるころです。
10年なんて建築の寿命を考えたら本当に短い時間です。
でもKセラも、この施工は標準仕様から消えたらしい。
今この仕様で出来るのは、M菱だけのようです。一番安全なのにね。

おそらく、パネルメーカーは、瓦棒の取り付け方法だとか、屋根葺き材の取り付け強度に信頼が持てないがために、あえて屋根野地に直接取り付けるんだと言うことなのでしょう。
でもそれは、建築の施工業者と、屋根葺き業者と、設計者と、連携とってしっかりと強度を確保できるようにすれば解決できるんです。

いやはや、雨音を聞きながら心静かにと思っていたのですが、
建築屋は雨漏りには特別敏感に反応するものなのです。



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