
解体に先立ちお祓いです。
何十年もお世話になり、人生を常に一緒に過ごしてきた家を解体するという時に、
人はどんな思いを抱くのでしょう。
僕には経験がない。
自分が建てた家を、あるいは自分が育った家を解体したことがまだないから。

でも、この仕事を長くやっていて、
家を壊すお施主様の気持ちにかぎりなく寄り添いたいといつも思っている。
事の重大さを僕は良く理解しているつもりだ。
経験がないから想像するしかないのだが。

重機が入っていよいよ家そのものの壊しが始まっている。
傍らでは常にお施主様が庭の手入れをしながら見守っている。
もくもくと植え木を刈るその背中に僕は声をかける。
今日は暑いですねえ、、なんて言葉を。
古い家を壊して新しい家を建てることは、喜びではあるけれど、
お施主様の心は複雑だろう。
壊されていく家をただ黙って一緒に眺めることしか、僕には出来ないんだけれど、、。
なにものかに祈るという気持ちを、この仕事を続けるうちに自然に持てるようになりました。