
時折大雨にかわる天気の中カッパを着て瓦礫の撤去をする。
帰りの路面電車はボランティアのシールを見せて無料だという。
こういう心遣いはありがたいよね。
チームを組んだ名古屋の女性、博多の男性。
僕らはほんのひと時だったけどいいチームだったよね。
たがいに気を使ってかばい合って、声をかけてね。
もう二度と多分一緒にこういう作業をすることは無いけれど、
こういう出会いはいつまでも心に残っているんだと思う。

街中の壊れた家にカメラを向けることをためらうからお寺の写真を撮る。
瞬間的にとてつもない応力がかかったのがわかる。
想像力をめいっぱいめぐらせて、僕は地震のゆれをイメージする。
そして思う。
構造もセンスだよ。
力の流れを頭の中でイメージできなければ構造設計は出来ないよ。
数字だけで耐震性を観ていなかったか。
倒れた新しい家の設計者に問いかける。自らに問いかける。
構造もセンスだよ。私の構造の師匠がよく言ったものだ。思い出す。

熊本城の石積みの美しさは30年ほど前に訪れた時のことを鮮明に覚えている。
番付を振られるのを待っている石。
もとに戻るのはいつの日になるのか。
一人では何もできない、形ばかりのボランティアに参加して、
次の日も冷たい雨に打たれながら、震災の町をさまよった。